ABiz Hotel

京都市内の高瀬川沿いの木屋町通りに面するホテルのプロジェクト。
周辺には先斗町を象徴する歌舞練場や、花街を継承する繁華街として多くの飲食店があり、歴史的風情と現代の賑わい、四季折々の表情を楽しむことができる立地である。
ホテルとしては周辺の観光の足掛かりとしてのいわゆるビジネスホテル的な位置づけであり、最小限の大きさの客室40室に、大浴場などの付帯設備がつくというシンプルなプログラムである。

奥行方向に長い敷地に合わせて立ち上げられたコンクリートの重厚感のあるボリュームは、京都の歴史的景観を意識した平入切妻の大屋根と、各階水平方向に長く伸びるアルミの軒庇によってリズミカルに分節される。ここでは屋根や庇といった伝統日本建築の建築要素を、極限まで薄く抽象化した幾何学形態として再構成しており、それによってつくりだされる深い陰翳によってファサードが印象付けられることを意図した。
高瀬川と鴨川に挟まれた場所性に対応し、階段室の縦格子や廊下の天井ルーバー、客室の障子の組子などに、川面の揺らめきをイメージした揺らぎのある繊細なデジタルパターンをあてている。

建物内部は均等に並べられた客室の界壁がそのままRC壁式構造の壁として立ち上がっており、客室内には一切柱梁型などがなく、要素を切り詰めたデザインと合わせ、実際より空間の広がりを感じられるようになっている。
先斗町歌舞練場への路地に沿って立つ道路塀は、アルミ押出材の板材を山型に内外交互に並べ、笠木でつなぐことで構成される。京町屋の足元を守る犬矢来、あるいは伝統的な大和塀を現代的に翻案したものである。

歴史性と現代性、重さと軽さ、洞窟性と開放性といった相反する性質を不可分な一つの建築の中にあわせもつことで、過去、現在、未来へと続く時間軸の中で、価値や意味が変転しても耐えうるような持続可能性をもち、なおかつ旅の非日常感を最大化されるようなホテルにしたいと考えた。

Year: 2023

Category: architecture

Status: Built

Location: Kyoto, Japan

Photo Credit: Yasuhiro Takagi

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