kitasando terrace

千駄ヶ谷の住宅地に計画された、地上5階建のオーナー住戸を含む共同住宅と貸事務所で構成される複合ビル。

矩形のコンクリートボリュームが押し出されたり、引っ込んだりしながら重なり、そのボリュームのずれた部分を外部階段やテラス・バルコニー、軒下として再定義することで、様々な外部空間が建物の各部に襞のように織り込まれる構成としている。

都心の住宅地の厳しい斜線制限、日影規制に対して、天空率などを利用しながらできるだけ多くの空間の気積を確保する一方、建物としては上階にいくほどセットバックしたり、また全体ボリュームを細かく分節することで周辺の街並みとのスケールの調和を図っている。
外部階段は建物ボリュームにまきつくように配置され、一見複雑な経路を描いているように見えるが、避難経路として一筆書き状になっており、2階の事務所はこの階段を使ってダイレクトにアクセスでき、それが第三者にとっても明示的になっている。一方でそこからの上階の住戸は北側EVを使うことを前提になっており、事務所利用者と住民の動線が交錯しないようなミニマルな動線計画となっている。

ボリュームがXY軸方向に複雑にオフセットしていくという全体構成をまとめるにあたって、3D CADによる一貫した作業環境と検討フローを構築し、設計監理の効率化をはかった。
天空率、日影検討に際して、CADによる算定ツールを独自に作成し(Rhino+Grasshopperによるスクリプト)、精度の高いリアルタイムでの法適合検証をしながら、複雑な形態のボリュームスタディを行った。
また各階のプランがすべて異なるという条件であるため、設備配管も含めてすべて3次元データ内でモデル化することで、意匠、機能、施工性・メンテナンス性を総合的に検証しながら設備レイアウト検討・ビジュアライゼーションを行い、施工者との打合せなどにも活用していった。

都内の住宅地にたつコンパクトな建物ではあるが、内外を結びつける多様な中間領域を設けることで、都市の風景や活動、風や緑などの自然を感じることができる懐の深い建築にしたいと考えた。

Year: 2023

Category: architecture

Status: Built

Location: Tokyo, Japan

Collaborator: 構造計画:坪井宏嗣構造設計事務所 / 施工: 前川建設

Photo Credit: 高木康広

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