XR HOUSE -北品川1930-

「XR HOUSE -北品川1930-」は、大和ハウス工業、バンダイナムコ研究所、NOIZが協業で行った、リアルとバーチャルが融合した未来の住まいを検証するプロジェクトです。
北品川にある築90年の2階建て長屋の一画を改修し、センシングやプロジェクションといったデジタル技術によって、人や行為、モノに対してインタラクティブな空間を実装しました。

1Fは大和ハウス工業とNOIZが企画・実装を担当しました。コモングラウンド *1 が実装された未来の建物においては、環境自体にもデジタル技術によって自律性が宿り、人や物、ロボットなどの各エージェントとの間で、常時双方向のやり取りが行われるようになることが予想されます。その第一段階の「人格をもつ家」として、環境である家と人との間で、始原的な双方向インタラクションが体験できる空間を実装しました。電球に触れると、壁や床を覆うように立体的に構成されたタイルのプロジェクションがインタラクティブに変化します。また、LiDAR *2 によって建物が人の位置を常にセンシングしていて、人がタイルに近づくとプロジェクションのパターンが変化します。人の行為に対して、まるで家が「もがい」たり「喜んだり」するように、ごくプリミティブな動的な存在として感じられるインスタレーションとしています。

2Fはバンダイナムコ研究所が担当した、1Fとは異なるインタラクティブな住空間です。ヴォロノイ畳を起用しているほか、NOIZでは一部内装の協力をしています。実空間と仮想空間との境界を曖昧にすることにこだわり、部屋そのものがバーチャル世界を「日常の延長線上として」のぞけるインターフェースになるよう、障子や襖といった建具をアクチュエーターとして活用しています。障子/襖を開けると、古都や神社のような、架空だけれど親しみのある屋外の景色や、隣室を通した庭の景色など様々なバリエーションの外部空間をリアルに感じられるようになっています。立体音響システムとプロジェクションに加えて、建具の移動量をセンシングし、その開閉量に合わせたリアルタイムな描画を連動させることで、動きや質感までも取り込んだ、より没入感ある複合環境としてバーチャルと現実の空間を融合させています。襖の間では、不定形で柱が貫通する特殊な部屋形状に合わせたヴォロノイ畳 *3 のエッジにLEDライトが仕込まれ、襖の開閉やシーンの選択と連動するなど、バーチャルの世界とのつながりを空間全体で感じられるような工夫が重ねてあります。

長屋全体の内装デザインも、NOIZが担当しました。1Fのタイルや2Fの畳/障子/襖は今回のプロジェクトの為に新たに制作されデジタル技術によって拡張されていますが、それ以外の木造の既存架構をそのままにあらわし、あえて改修工事中のようなボード壁や合板を見せることで、日常的な中に新旧のレイヤーの重なりや対比を感じられるような設計としています。1Fの入口には非日常的で和風の長屋とのコントラストが強い、ミニマルなヴォールト天井の通路を設け、外界の日常感と内部での体験を切り離す舞台装置として機能させています。1Fの体験空間はむき出しの既存躯体と、ゲーム空間のボクセルのような大判タイルとの不釣り合いな組み合わせとして、歴史や風合いといった日常感と、動的でデジタルな非日常感とのコントラストを強めています。2Fには障子の間と襖の間が二室設けられ、それぞれの空間で異なる没入体験ができるような構成となっていて、デジタルなインタラクションが、障子や襖、既存の柱といった、あえてデジタル感とは対極的なものをトリガーとして始まるしくみにしてあります。

サラウンドの音響や人の動作と連動するインタラクション、記憶と接続する住環境などが折り重なることで、見慣れたCG技術やインタラクションが、意外なほどに肌感として人の気分や行動にポジティブな影響を与えることが、多くの体験と感想から実証されました。

[オープン期間:2022年6月2日 ー 8月31日]

*1. 現実の都市や空間をデジタルに記述することで、人だけでなくロボットやAIが共通認識を持つことを可能にする3D空間デジタル記述の共通プラットフォーム。
*2. レーザーを使い、離れた位置の物体の形状や距離を測定するセンサー技術。
*3. アルゴリズムによって空間の形状に合わせた分割パターンを可能にする畳。NOIZと国枝によって共同開発/販売を行っている。

Year: 2022

Category: installation

Status: Completed

Location: Tokyo, Japan

Collaborator: 大和ハウス工業/バンダイナムコ研究所/白木良(1F Visual Programing)/Pixel Engine(1F ProjectionPlanning)/新工芸社(1F Sensor Interaction)/村中真澄(1F Sound)

Photo Credit: 高木康広

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